都市部を中心にトランクルーム(貸コンテナ)を見かける機会が非常に多くなっていることは「近年増え続けているトランクルーム・レンタル収納スペースの状況」でもお話しました。
トランクルームは、正式にはセルフストレージ業といいます。このビジネスはアメリカが発祥で、1970年代から普及し始めたビジネスモデルです。現在、世界で注目されているセルフストレージ領域ですが、今回は主にアメリカを中心とした諸外国の市場規模とその発展性について見ていきましょう。
目次
海外のトランクルーム市場事情
世界のトランクルーム市場をみるとアメリカ(米国)、カナダ、オーストラリアという順での市場規模になります。
セルフストレージ先進国アメリカ
市場規模のデータから分かる通り、発祥地であるアメリカの売上高220億ドル、普及率10%と諸外国に比べ極めて高い水準です。
さらに、セルフストレージ専門のREITが6つ上場しており、直近15年間では最もパフォーマンスが良いカテゴリの1つでもあります。
10世帯に1世帯がセルフストレージを日常的に利用しており、生活の一部として根付いております。
アメリカ以外の諸外国セルフストレージ事情
オーストラリアのトランクルーム
世界3位のオーストラリアを見てみると、1980年代初頭にセルフストレージ業が生まれ、現在では6億ドルという市場へと成長をしております。国土が広いこともあり、敷地に平屋のトランクルームを設置するのが主流となっております。
イギリスのトランクルーム
世界5位のイギリスを見てみると、市場規模は約5億ドル。世界規模でも著しく成長を続ける有望市場となってます。
イギリスの主な会社であるShurgard社は、欧州7か国で10万人以上の顧客と170以上のストレージ施設を持つヨーロッパ最大のマーケットリーダーです。
また20年間で、オーストラリア、イギリス以外にもカナダ、ヨーロッパ、アジア諸国などにおいてもアメリカと同様の高い成長率を誇っています。
世界各国においても日常生活の一部としてトランクルームサービスが浸透しつつあります。
日本国内のトランクルーム市場事情
海外のトランクルーム事情が分かったところで、日本国内のトランクルーム事情を見ていきましょう。
日本国内のトランクルームの歴史
日本における最初のトランクルームは、1931年に三菱倉庫が開設したのが始まりです。
アメリカやフランスの新しい文化が入ってきたことによって、生活にゆとりができ、それに伴って、家財道具が増え保管スペースへのニーズが高まりました。
その後、バブル期以降ものの豊かさを預かるサービスとして急速に拡大した業界です。
1980年代には、海外へ赴任する方やリフォームをする方の家財道具を預けるニーズが急増してきたことにより需要が伸びました。
さらには海上コンテナを仕切り、スペース貸しを行ったところ、通常の貨物預かりサービスよりも費用が抑えられることが分かり、こうしたサービスも拡大し、現在に至っています。
現在のトランクルーム事情
トランクルーム市場の成長予測図から分かる通り、日本国内での市場規模は650億円ともいわれていて、年率8%以上で成長しています。
国内セルフストレージ市場と海外ストレージ市場の比較
先述の通り、アメリカが最大市場で220億ドルの規模、市場普及率においても群を抜いています。
アメリカと日本は国土の広さや住宅事情が異なるため、単純な比較は難しいですが、日本向けにローカライズした、的確なサービスを提供することで、さらなる成長余地が期待されています。
まずアメリカと日本では、トランクルームのユニットのサイズと契約料金が、大きく異なります。
これは、アメリカの国土の広さや、住宅の広さ、不動産価格などが大きな要因です。
一方で、日本は住宅が密集する都市部に屋内型トランクルーム集中しており、坪単価もアメリカと比較すると高くなっています。
ユニットの平均サイズは、日本は約9平方メートル、アメリカでは約13.5平方メートルです。
ストレージ成長要因「4D」とはなにか?
「4D」は諸外国でセルフ成長要因となる要素です。日本における環境と当てはまっておりより成長可能と考えられています。
Death高齢化(老人施設入居・死亡)
もし仮に両親が亡くなってしまった場合、遺品の整理をします。その際、捨てられない遺品などを預ける場所としてニーズが発生します。
日本はこれから高齢化社会が進むことは間違ありません。
Divorce(離婚増加)
離婚の際、二人で住んで使っていた家財道具の整理に追われると思います。二人用の家から独身者用の家に引っ越すとなるとものが溢れてしまいます、そのため、自分の私物などの一時的な保管場所としてのニーズが発生します。
Density(住宅狭小化)
比較的イメージし易いと思います。単純に収納スペースが少なく、趣味の物や、かさばる冬用のコートなどの保管場所として一定数のニーズがあります。
Dislocation(人口流動増加による引越増加)
グローバルでの人口移動が多くなっており、引っ越し需要が高まると、一時的な家財道具を保管する場所として、トランクルームが選ばれています。
大手不動産企業の参入でセルフストレージ事業はどう変わる?
中小事業者が多かったセフルストレージ業ですが、昨今、大手不動産会社がの参入が起きています。この影響により、セルフストレージ業界はさらなる競争激化になってくる可能性が高まっています。
考えられる影響
競争激化が起これば、セルフストレージ業界全体は発展していきます。
しかしそれに伴って社会的認知度はさらに上がり、社会的責任や世の中への影響をもっと考えなくてはいけません。
屋内型ストレージを例にあげると、消防法への対応や更には集客にも関わってくる看板面積に関する条例など、様々な行政上の規定をクリアすべきことになります。
既存のセルフストレージ事業者はどう戦うか
セルフストレージという不動産活用はまだ新しい分野なので、新規参入者である、大手不動産会社ではセルフストレージに適した物件を探すことに慣れていません。
その点を考えると、ノウハウの蓄積のある既存のセルフストレージ事業者のほうにアドバンテージがあるといえます。
決め手になるのはユーザーにとってよりよいサービスを提供することでしょうか。
まとめ
今回は海外と国内のセルフストレージ業界を比較し、さらに大手不動産会社の参入がもたらす影響について解説しました。
そのことから、国内のセルフストレージ業界はまだまだ発展途上で、海外とを比較するとまだまだ発展性があることが伺えます。
そして大手不動産企業の参入によって、さらなる競争激化で市場全体が発展すると予想されます。